大蛇がまちを練り歩く“奇祭” 生麦蛇も蚊も祭り 伝統守る本宮、原両地区で5年ぶり「通常開催」
400年以上、悪疫退散の民俗行事
鶴見区内生麦に江戸時代から伝わる伝統の民俗行事「蛇も蚊も祭り」が、6月2日に行われ、生麦の本宮(もとみや)、原の両地区で地域住民らが茅で編んだ大蛇を担ぎ、まちの中を練り歩いた。
蛇も蚊も祭りは、400年以上前から続く伝統行事。江戸時代、漁村だった生麦に流行り病が起こった際、悪疫退散を願い蛇を作ったことが始まりとされる。
かつては本宮、原地区の合同で行われていたが、戦前より2地区それぞれで実施されるようになったという。
現在は、横浜市指定無形民俗文化財にも指定されている。
「蛇も蚊も出たけ、日よりの雨け―」かけ声そろえ歩く
奇祭と呼ばれるように、両地区とも茅などを使い蛇を編む。龍のようにヒゲや角がつくのも特徴だ。
本宮は3体、原は2体、いずれも15〜20mほどの大蛇を作り、「蛇も蚊も出たけ、日よりの雨け―」のかけ声とともまちを歩き、家々を回る。
各家庭では、玄関先や部屋の中まで蛇を入れ、健康などを祈願する。
本宮地区、3体の大蛇そろう
当日、午前中に実施される本宮地区。
コロナ禍でも絶やさぬようにと蛇を編み続け、一昨年は1体、昨年は2体、そして今年、5年ぶりに3体が揃った。
出発地点となる道念稲荷神社には、近隣住民や来賓の鶴見区選出議員らが顔をそろえ、杉山神社の宮司らによる神事でスタート。
同地区町内会の住民や子どもらが大蛇を担ぎ、各方面の家を訪れた。家々を巡った3体は、最後に生麦小学校の校庭でもみ合いを見せ、コロナ前同様のクライマックスとなった。
本宮地区の生麦蛇も蚊も保存会の石川建治会長は「久しぶりに3体作った。伝統をしっかりと続けていくことが役目。来年以降も次世代につなげていく」と話した。
原地区もコロナ前の形に
当日の朝に大蛇を編む原地区。午後からの開始に合わせ、早朝から生麦神明社で手編みの作業があった。
同地区の生麦蛇も蚊も保存会の山崎省三副会長によると、コロナ明けの昨年は蛇を作ったものの例年より短く、神明社の中を担いだのみ。
本宮と同じく、5年ぶりにコロナ前と同じ形での開催となった。
杉山神社の宮司らによる神事のあと、2体の大蛇は原西と原東にわかれ、各町会メンバーが担いで巡行。神明社での絡み合いで締めくくられた。
原地区生麦蛇も蚊も保存会の山沖邦則会長は「ようやく元に戻った。長年続いてきたもの。途絶えさせるわけにいかない。子どもたちも参加してくれてよかった」と語った。
両地区で大蛇を招き入れた家からは「コロナの間は寂しかった。また始まってくれて元気をもらえる」「この日を待っていた。運んでくれる皆さんに感謝」などと声が上がっていた。