「お父さんの会」が企画

 豊岡小学校で2月10日、小惑星探査機「はやぶさ2」の開発などに携わったJAXA(宇宙航空研究開発機構)の佐伯孝尚さんを招いた講演会が開かれ、親子ら120人が世界初の偉業を成し遂げた探査機の活躍の裏側に耳を傾けた。

 講演会は、児童向けイベント企画や運動会の手伝いなどを行う豊岡小学校お父さんの会(新田耕治運営委員長)が主催。会のメンバーが佐伯さんと縁があったことから企画された。

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 「はやぶさ2」は、世界で初めて小惑星から物質を持ち帰った「はやぶさ」の後継機。2014年12月、地球から約3億km離れた小惑星「リュウグウ」を観測対象として打ち上げられ、2020年12月に地球へ帰還した。

 地球圏外の気体サンプルや地下物質の採取など、世界初となる偉業を複数達成したことで知られている。

 宇宙工学を専門とする佐伯さんは、はやぶさ2の開発を主導したプロジェクトエンジニアで、小惑星に着陸させるためのフライトディレクタも務めたほどの人物。

 当日は「小惑星サンプルリターン探査機はやぶさ2の軌跡」と題し、開発から地球帰還までの秘話を語った。

写真や映像を交えながら、秘話を語った佐伯さん

人類にとって重要な惑星探査

 佐伯さんは冒頭、小惑星探査の意義について言及。「太陽系発生の手がかり」「資源の探索」などを挙げ、「人類にとって重要なこと」として講話をスタートした。

 はやぶさ2プロジェクトは、より昔の名残りがあるとされる天体「C型小惑星」を目指したことや、探査方式として最も難しい「サンプルリターン」だったこと、打ち上げから1年間は地球を周回したことなどを解説。

 天体内部の調査を目的に開発された、人口クレータ作成のための衝突体発射装置の開発実験も紹介した。

ピッチャーマウンドへ着陸の高難度ミッション

 探査機までの距離を「はやぶさ2に『おーい』と言ってから向こうに聞こえるまで20分かかる」と説明した佐伯さん。

 目標としたC型小惑星「リュウグウ」が、着陸には不向きな岩だらけの表面だったため、一度目は断念した様子や、着陸場所選定の様子なども伝えた。

 着陸場所を野球場に例えた佐伯さんは、はやぶさ2の着陸精度を「直径100mの範囲のどこかに降りられるくらい」としたうえで、「探査機に支障がない場所に降りるには、ピッチャーマウンドの内側を目指さないといけなかった」と難易度の高さを強調した。

決断を迫られた当時の緊迫した映像も流れた

「21回の撃墜」で得た成果

 2度目の着陸でも降下開始後にトラブルが発生。

 指令までに20分を要し、自転する小惑星の“ピッチャーマウンド”へ着陸という高難度ミッションを前に、「決行」か「断念」か、当時の緊迫した現場について映像も交えて解説した。

 数々の難題をクリアした要因として、「たくさん訓練した」と語った佐伯さん。打ち上げ後に行った44回の訓練で、大成功はたった9回。21回は失敗を示す撃墜だったことを明かし、「むしろ失敗することで工夫でき、訓練を繰り返すことでチームワークが良くなった」と成功の秘訣を語った。

 講演を聴いた豊岡小6年の高橋景都さん(12)は、「もともと興味があって参加した」としながら、「取組やミッション、話のすべてが神秘的ですごかった」と目を輝かせた。


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