今日の「鶴見な人」vol.9 間瀬 なのはさん(B-Girl/ダンサーネーム・NANOHA)

自分求め、踊るが日常 楽しさは日々更新中

間瀬 なのはさんま  せ 鶴見区内在住 17歳

 DJの流す音楽に乗り、独創的でアクロバティックなダンスを繰り広げるブレイキン(別名:ブレイクダンス)。1970年代の誕生から世界へと広まり、ダンススポーツとして今夏のパリ五輪から正式種目として採用されるなど注目度が高まっている。個性(スタイル)を競う、その魅力にハマり続け、“ダンスがある日常”を送る日々。「挑戦できることが楽しい」。踊る喜びに勝るものなし―全日本3位の実績を手に、7月7日、最高峰の舞台に挑む。

 即興で独創性や技術、表現力などを競うブレイキンバトルのなかで、1on1(1対1)の世界最高峰と言われる「Red Bull BC One」。

 世界30カ国以上で地区予選、国内代表戦などが行われ、ワールドファイナルに出場できるのは男女16人のみという狭き門。

 日本では東京、大阪、福岡など5つの予選大会と学生大会の覇者などが顔をそろえ、世界に挑めるたった一つの椅子を競い合う。

 決戦は7月7日、日本王者決定戦「Red Bull BC One Cypher Japan」。4月の名古屋大会を制し、女子トップ8の一角として出場する。

 昨年、初出場で挑んだ同大会は1回戦負けだった。

 「もうやることは決めている」。スタイルを魅せる準備は万端。あとは出し切るだけだ。

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 東台小、寺尾中出身。小学校1年生でダンスを始めた。最初はブレイキンではなく、ヒップホップという別のジャンルだった。

 「保育園の先生が教えてくれた踊りが楽しくて」。週に1回の楽しい習いごとだった。

 初バトルは小学校5年生のときのレッスン中。「ボロ負けで新しい感覚だった」と振り返る。

 込み上げた悔しさ。持ち前の「負けず嫌い」で、次のバトルでは優勝してみせた。

真剣な表情で練習に汗を流す

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 習いごとの枠を越えたのは、バトルの楽しさに目覚めた小5のとき。初の大会は、現在も練習拠点としている当時鶴見駅東口にあったダンススタジオWAAAPS(現鶴見駅西口)での大会だ。

 ROOKIES SESSION(ルーキーズセッション)というジャンルを問わないフリースタイルのバトル。

 目の前で繰り広げられるさまざまなダンススタイルに刺激を受けた。

 そして、運命を決めたのは翌年、WAAAPSの最初の体験日でのこと。

 「ロックダンスがやりたかったんですけど、その日はブレイキンしかやってなくて」

 偶然の出会い。初めて体験するブレイキン。逆立ちや止める動きなど、普段しない身体の使い方に苦戦した。

 「全然できなかった。できないことが悔しくて、楽しかった」。一歩目でのめり込んだ。

「たくさん成長させてもらった」というWAAAPS恒例のルーキーズセッション。7月21日の大会で初めてジャッジを任されたと笑顔

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 習い始めて2年でブレイクダンスキッズ日本一の栄光を勝ち取り、2022年にはALL JAPAN  BREAKING CHAMPIONSHIPS(全日本ブレイキン選手権)のユース部門で3位に輝いた。

 今年2月には、同選手権で16歳以上から参加できるオープン部門に出場し3位入賞。

 (公社)日本ダンススポーツ連盟ブレイクダンス本部(JDSF)が指定する2024年度の強化選手に選出された。

 国際大会へ優先派遣されるなど、五輪出場権獲得への条件とも言える強化選手。

 全日本選手権でベスト8に入ることが基準とされ、22年に続き2度目の選出となったが、「山場は昨年だった」と唇を噛む。

 ワールドシリーズでのポイント制で決まるパリ五輪の代表枠。昨年8位以内に入れなかったことで、五輪出場につながるタイミングでの強化選手への指定を逃し、スタートラインにすら立てなかった。

 「今、戦っているみんなをリスペクトしている。でも、そこに食い込みたかった」

 挑戦できずに負けた自分に無念さをにじませる。

今年2月の全日本選手権で3位に入り、2024年度の強化選手に選ばれた(写真は本人提供)

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 「まだまだハマりきらない。ずっと楽しい」。毎日踊らないと気がすまないほど、四六時中ダンス漬け。

 「よく聞かれるんですけど、本当にダンスしかしてない」。困り顔で答えるのは日々の生活のこと。

 現在、獅子ケ谷の橘学苑高校に通う高校3年生。「至って普通のJKです」と笑う。

 ふとするとダンスのことを考えてしまうが、不思議と「踊って」と言わない友人たちのおかげで、学校が“非日常”の息抜きに。

 「他愛なくふざけたりしていると、ダンスから離れられる」

 大会などが終わって余裕が出たときという年に数回の遊びでの外出。「今回の大会が終わったらかな」。そう言ってほほ笑む。

「高校卒業したくない」と話すNANOHAさん

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 「できないという壁を乗り越えていくのが楽しい」

 放課後のWAAAPSでの練習。自分と対峙する時間。

 独自性を追求する孤独な戦いだが、「ずっと一人で同じところにいると、いいのか悪いのかわからなくなる」。環境を変えながらインスピレーションを得ようと、ブレイキンのチームにも入り、周囲からも貪欲に吸収する。

 踊り続けた先に、最近ようやく自分の目指すスタイルが見えてきた。「早くバトルで出したい」。楽しさは増すばかりだ。

WAAAPSでの練習は自分と対峙する時間

一つずつ動きを確かめながら取り組む

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 「目標はBC Oneワールドファイナル優勝。海外に踊りに行って、私のスタイルを知ってもらいたい」

 スポーツとして、カルチャーとして、シーンがわかれることもあるブレイキン。「どちらも良さがあるから、欲張りたい」

 さまざまなテクニックや技が盛り込まれる一度の踊りの中で、同じ動きを繰り返さないのがルール。そのため唯一無二のスタイルは必要不可欠。

 “自分らしさ”を追い求め、毎日踊る。その日常を楽しみ続ける。(了)


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