外国人支援などに評価 NPO法人ABCジャパン(鶴見中央) 国際交流基金地球市民賞を受賞 神奈川県内では5年ぶり5件目
先導的な国際交流活動を称える
鶴見区を拠点に外国人支援を行っている特定非営利活動法人ABCジャパン(安富祖美智江理事長)が、全国でも先導的な国際交流活動を推進する団体に贈られる国際交流基金地球市民賞の今年度(2023年度)受賞団体に選出され、1月18日、神奈川県庁で行われた受賞団体発表会で賞状などが授与された。
神奈川県内団体の受賞は2017年以降、5年ぶり5件目となる。
安富祖美智江理事長は「20年以上、外国人も日本人も住みやすいまちを作るために活動してきた。取組が評価されて本当に嬉しい」と喜んだ。
全国3団体に栄誉
国際交流基金地球市民賞は、世界で国際文化交流事業を実施する外務省所管の独立行政法人国際交流基金(JAPAN FOUNDATION=JF)が1985年から実施しているもの。
全国を対象に、地域に根ざした先導的な国際文化交流活動を実施している団体を称えるもので、昨年度までに118団体が受賞している。
今年度は全国78件の応募の中から、ABCジャパンをはじめ、難民支援を行う東京都渋谷区の特定非営利活動法人WELgee、発展途上国から視覚障害者を招き支援を続ける東京都板橋区の社会福祉法人国際視覚障害者援護協会(IAVI)の3団体に贈られた。
学習支援などライフステージごとに
戦後多数のブラジル移住があった沖縄の出身者が多い鶴見区は、そのコミュニティを頼りに古くから日系ブラジル人が移り住んでいる地域。横浜市内では最もブラジル人が多く、外国人全体でも市内18区中2番目に多いエリアとなっている。
ABCジャパンは、鶴見に移住する外国人支援などを目的に、現理事長の安富祖さんをはじめとした鶴見に住む日系ブラジル人当事者による団体として2000年に設立した。
2006年に法人化し、現在ではライフステージに合わせたさまざまな支援を展開。子どもたちへの学習支援や、小中学校入学、高校・大学進学のための多言語ガイドブック作成のほか、大人向けにも日本語教室、キャリア支援などを行っている。
当事者による伴走と地元密着に評価
受賞理由について国際交流基金は「日本人が外国人を支援するという従来の関係性を超え、当事者たちだからこその包括的支援になっている」などと説明。
「外国人と日本人という関係でなく、ともに地域に住む『鶴見人』という共通点で、常にオープンな関係性を築いている」と加え、先般立ち上げた群馬支部を例に、「他地域のモデルになるもの」と取組を高く評価した。
同賞選考委員で立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科・特任教授の若林朋子さんは、選考資料となる関係者へのインタビューレポートの共通点として、「『ABCジャパンさんの活動は明るく気持ちいい』と口を揃えていた」とコメント。
「明るさというのは、地域に根ざした共生社会を実現する活動において本当に大事なこと。誰もが受け入れてもらえると感じる雰囲気づくりを長年にわたり実践してきたのだと感銘を受けた」と感想を述べた。
また、発表会に同席した神奈川県国際文化観光局の香川智佳子局長は、県内に176の国と地域から23万9千人の外国人が住んでいることを紹介したうえ、「家族で来日する方など、これからも外国人は増え続けると思う。教育支援などは重要。県でも進めていくが、ABCジャパンの今後の尽力にも期待したい」と祝辞を送った。
言葉の壁、不安取り除く支え
「ABCジャパンがなかったらがんばれなかった」。そう話すのは、現在ABCジャパンで子どもたちの学習支援スタッフとして活動するオリヴェイラ・ケヴェンさん。
高校入学を控える15歳のときに来日したケヴェンさん。当時まったく日本語はできず、「不安で仕方なかった」と振り返る。
初日からABCジャパンに通い、毎日日本語を勉強。昨春、青山学院大学経済学部経済学科に一般入試で合格した。
今回の受賞についてケヴェンさんは「自分のことのように嬉しい。経験を生かして、子どもたちを応援していきたい」と笑顔を見せた。
安富祖さんは「活動資金が無いときやコロナなどもあり、大変なことも多かったが、受賞は本当に嬉しい。私自身30年以上鶴見に住み、今はもう鶴見人。国や出身に関係なく、鶴見人であることに誇りを持っている」として、愛着ある地元鶴見でのさらなる活躍を誓った。