コロナ禍の運動不足を憂慮 「解消に」とスタート

 鶴見小学校5年2組の児童33人が授業を通して独自に考案した「ゆるスポーツ」4種目が完成し、鶴見中央地域ケアプラザの利用者など向けに体験会を開催。利用者らは「熱中して楽しかった」と笑顔で汗をぬぐった。

 鶴見小学校5年2組考案の「ゆるスポーツ」は、保育園児から小学校低学年と視覚障がい者などを対象とした「ブラインドサバイバル」、保育園児から小学生と聴覚障がい者、上肢障がい者など向けの「バランス鬼ごっこ」、高齢者と聴覚障がい者などを対象とした「玉入れ卓球」、高齢者や車椅子利用者、聴覚障がい者など向けの「かご入れテニス」の4種目。

 いずれも総合の学習の時間に取り組んだ。

 児童たちは、今年度の体力テストの結果が前年度よりも低い児童が多いことに着目。コロナ禍での運動機会減少が背景にあると分析し、「鶴見のまちの人たちも運動機会の減少、運動不足なのでは」と、誰でも楽しめるスポーツづくりがスタートした。

2月、鶴見小学校を訪れたパラテコンドー日本代表の田中光哉選手

パラテコンドー・田中選手が協力

 各種目の考案にあたってインターネットなどを駆使して調査するなか、パラテコンドー日本代表で昨年春まで鶴見区本町通にある教室「洪人館」を練習拠点としていた田中光哉選手(電通デジタル所属)と交流。

 昨年7月、田中選手の現拠点となる福岡県とオンラインで結び、スポーツづくりのヒントをもらった。

 田中選手は「競技や障がいのある人の生活、日ごろの考えなどを一人でも多くの子どもたちに知ってほしいという気持ちもあり、鶴見小の児童がパラスポーツだけでなく、誰でもできるスポーツを考案したいと知り、できることがあればと思った」と協力。

 「障がいのある人たちは何か特別な存在ではなく、みんなと変わらない存在であることが前提」と伝えたうえ、「それぞれの特徴を見つけて伸ばしてあげるような工夫が重要」とアドバイスを送ったという。

頭の上に手製の帽子を乗せて行う「バランス鬼ごっこ」

体験会企画、改良や工夫重ねる

 そうしたアドバイスなどをもとに4種目を考案後、児童たちは学校内外の協力を得て体験会を企画。低学年や授業参観で訪れた保護者、鶴見中央地域ケアプラザを利用する高齢者などに体験してもらいながら、ルールや道具を改良してきた。

 よりやりやすい形にしていくなか、2月には田中選手が来校。3種類の大きさの帽子を頭に乗せ、落とさないように慎重になることで、足の速さによらないといった工夫を凝らした「バランス鬼ごっこ」を披露し、ともに汗を流した。

 体験を終えた田中選手は「誰よりも自分が楽しんでいたように思う」とコメント。

 「鈴の音がもっと鳴るようにすれば視覚障がい、手に障がいある人もタッチ用の棒を作るとできる」と話し、「もう少し工夫すると本当に色んな人ができる。汎用性の高さを感じた」と出来栄えに太鼓判を押した。

玉入れ卓球で使用するラケット。チーム戦で、3種類の大きさの穴に球を入れ、点数を競う

完成したスポーツに高齢者も満足

 3月14日、鶴見中央地域ケアプラザで2回目となる体験会を実施。完成した2種目、大きさの違う袋付きのラケットに球を入れ点数を競う「玉入れ卓球」と、2対2でタオルやビニール袋を使いラリーする「かご入れテニス」を案内し、高齢者らを楽しませた。

 2月の体験会で「ルールがわからず難しい」と言われていた玉入れ卓球では、「シンプルになって楽しく、熱中しちゃった」と参加者。かご入れテニスも、ラリーごとに声が上がるなど盛り上がった。

卓球に熱中する高齢者

タオルやビニール袋を使って2対2で競うかご入れテニス

工夫明かす児童 「大成功」と笑顔

 玉入れ卓球に取り組んだ林那々花さんは「そもそも一回目は楽しんでもらえていなかった」とし、ルールを難しくしていた視覚障がい者向けとしていた対象者を変更するなど、工夫した様子を説明。

 かご入れテニスを担当した中澤穂香さんは「初めはノーバウンドでラリーとしていたが、行ったり来たりするだけになってしまった」と反省点を挙げ、ワンバウンドさせることでゲーム性を高め、より楽しめるようにしたことを明かした。

 完成したスポーツを披露した2人は「わかりやすく楽しかったと言ってもらえて嬉しかった」と笑顔を見せ、「大成功だった」と声を弾ませた。

 佐藤由美子教諭は「当初は自分たちが楽しめる形だったが、田中選手に話を聞き、気づきがあった。それぞれの立場にたち、方法や道具を改善するなか、『まずはやってみよう』という前向きな姿勢も見られた。失敗を恐れず、チャレンジする強い心を持つことができたと思う」と児童の活動をねぎらった。


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