鶴見川人道橋が開通 水管橋撤去から約10年 地域住民待望の橋、矢向・江ケ崎と上末吉を再び結ぶ

完成した鶴見川人道橋(手前=矢向側から撮影)
矢向1丁目と上末吉2丁目の対岸を結ぶ鶴見川人道橋が、3月27日に開通した。同日、記念式典や渡り初めなどが行われ、両岸の上末吉、矢向、江ケ崎地区の住民らが完成を喜んだ。
横浜市道路局は、「完成により最寄り駅までの移動時間の短縮や利用できるバス路線の増加といった生活利便性の向上、広域避難場所である三ツ池公園への避難時間短縮などの防災機能向上などが期待される」とする。
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新設された鶴見川人道橋は、人と自転車専用の橋。鶴見区と川崎市幸区にかかる末吉橋と済生会横浜市東部病院そばにある新鶴見橋のほぼ中間地点に架けられた。
もともとこの付近には水道管点検用の橋があり、所有する川崎市が地域住民らに開放していた。1954年の設置から水管橋として長年親しまれてきたものの、老朽化などを理由に2011年に撤去が決定。河川法の関係で川崎市が水道管を地下に埋設したことから、住民らは生活のルートを失くす形となっていた。

かつての水管橋(写真提供)
広域避難などに利用 近隣2町会と連合会が市へ要望書
末吉橋と新鶴見橋の間は約1.5㎞。水管橋がなくなると大幅な迂回を余儀なくされることから、撤去決定前後に住民から存続を求める声が続出した。
特に矢向・江ケ崎地区の広域避難場所が対岸側の県立三ツ池公園となっていることなどもあり、2015年には上末吉地区自治連合会、矢向一丁目町内会、江ケ崎町内会が新たな人道橋設置を求める要望書を横浜市道路局へ提出。
必要性が検討され、18年に事業方針を決定。21年に着工され、整備が進められていた。

新たに整備された鶴見川人道橋
新たな人道橋は、幅員が4mと水管橋時代の1mから4倍に拡大。「狭いと避難時にパニックが起こる」などとした地元の要望を踏まえた形となった。
橋長は113.9mで、4mごとにLEDランプが取り付けられ、夜間でも明るさを確保。人道橋そばの両岸にはスロープも新設され、住宅街からの利便性も向上した。

両側の手すり部分に取り付けられているLEDライト
地元中学生らが橋名を揮ごう
橋の施工は五洋建設㈱が担当し、100%太陽光で駆動する工場で部品が造られるなど、環境に配慮した形で建設された。
橋名板は、区内に工場を置くガラスメーカー・AGC㈱が寄贈。橋名板に書かれた「鶴見川人道橋」などの文字は、矢向、江ケ崎、上末吉の3地区の代表者が揮ごうした。
そのうち、3年前、当時矢向中学校3年の時に揮ごうしたという宮路大佑さんは「この年でかかわることができると思わなかった。実際に見て実感した。大人になっても誇れることができた」と胸を張った。

宮路さんが揮ごうした鶴見川人道橋の文字
渡り初めに感慨ひとしお
矢向中学校で行われた開通記念式典には、住民ら関係者が集まり、くす玉割などでお祝い。
当時要望書の提出にも尽力した江ケ崎町内会の黒川治宣会長は「要望書から10年で完成。この間の対応に感謝したい。低下していた利便性も向上する」とコメント。
要望書提出当時、上末吉地区自治連合会の会長を務めていた渡邊武さんは「ようやくできた。ほっとしたよ」と晴れやかな表情を見せた。
式典後の渡り初めでは、待望の完成に一歩ずつ踏みしめながら住民らが対岸へ渡る姿が見られ、矢向側のたもと付近に住むという地域住民の一人は「完成を待ち望んでいた。緊急時はもちろん、日常でも便利になる」と話した。
- 矢向中学校体育館で行われた開通式典
- 記念式典であいさつする江ケ崎町内会の黒川会長
- 関係者らでくす玉割とテープカット

渡り初めでのテープカット
- 完成を喜ぶ住民ら
- 渡り初めは、一般共用前に特別に行われた
- 橋名板をはさみ記念撮影する揮ごう者。宮路さんのほか、矢向で書道教室を開く永井松鶴さん、上末吉在住の阿部跳龍さんの3人が各地区を代表して揮ごうした