鶴見の魅力の一つ“沖縄”をまとったタクシー

 「ようこそ鶴見へ!」―この春から、カラフルなシーサーをまとったラッピングタクシーが、走って鶴見をPRしている。

 鶴見区内で目撃談が相次いでいるラッピングタクシー。車体には、色鮮やかな琉球びんがたの色彩を使ったシーサーやハイビスカス、南国の魚たちが描かれている。

 「鶴見ちむどんらく」とメッセージも添えられたこの車に乗るのは、個人タクシー・堀場タクシーの堀場蔵人さん(50)。

 「どんらく」は自身の名前、「くらんど」を逆から呼んだ愛称。

 「二度見、三度見されて、写真撮影される」というほど目を引くラッピングで、鶴見の魅力を発信する。

「どんらくさん」こと、堀場蔵人さん(区内首都高湾岸線・大黒パーキングで撮影)

区内デザイナーがデザイン担当

 タクシーのデザインを担当したのは、鶴見区内を拠点にデザイナーとして活動するArt Creative Studio NMR’sにゃんまるず(旧アート工房まんまるず)の藤岡直人さん。

 描かれたシーサーは、藤岡さんが生み出した、沖縄の魔除けの守り神・シーサーと猫を組み合わせたオリジナルキャラクターの「しーさにゃん」だ。

 地域のイベントなどを通じ、顔見知りだった二人。

 タクシーのラッピングは、堀場さんが来場者として遊びに行くだけの立場から、運営側になるためにと考案したものだという。

 「ずっと客側だけで、どうしたらタクシーで楽しませる側になれるか、鶴見を盛り上げられるかと考えて辿り着いた」と堀場さんは説明する。

ちむどんどん横浜鶴見プロジェクトのロゴマークもあしらわれている

オリジナルキャラを活用

 当初、デザインは自分で描くつもりだったが、藤岡さんに依頼したのは、たまたま見かけた知人が着たTシャツがきっかけだった。

 「しーさにゃんのTシャツがイメージにぴったりだった」。返還後の沖縄をテーマとしたNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』でも、沖縄にルーツのある人が多く住むまちとして舞台の一つに選ばれた鶴見。

 そんな鶴見をアピールする題材として、モチーフに選ぶ予定だった沖縄のデザインと、「しーさにゃん」がマッチした。

 「見てすぐに『これだ』と思った」と堀場さん。藤岡さんのデザインと知らず、教えられたときは驚いたという。

Tシャツと同じデザインを使用した

熱意伝え、各方面から許可

 制作にとりかかり、最も苦労したのは許可関係。

 前面(ボンネット)へのラッピングは制限があり、広告はNGとなるため、運輸局や横浜市などに自己PRであることなどを説明してまわった。

 個人タクシーの組合からも「待った」がかかったが、地域を盛り上げるためだと熱意を伝えると、逆に応援されるようになった。

鶴見ちむどんらくの文字が入ったボンネット

原点は「鶴見愛」

 もともとは区内タクシー会社・東宝タクシーで運転手として勤務していた堀場さん。

 「20歳のときに鶴見に越してきたが、最初は工業地帯で冷たいイメージだった。でも、駅前に出て飲み屋に行ったら、みんな仲良く温かくて」。それが鶴見を好きになった理由だ。

 鶴見区の観光人材を育てるため、横浜商科大学や区が実施している「鶴見コンシェルジュ養成講座」も受講。鶴見のことを知るたび、原点にあった「好き」が増し、今回につながった。

乗車の際に見えるように、後部ドアに書かれた「ようこそ鶴見へ!」の文字

情報発信できるタクシーに

 4月29日から運行を開始し2カ月ほど。テレビなどの取材も受け、『乗りたかったんです』と言われることもあるという。

 最初に乗車したという区内在住の舘野隆さんは「知らずに呼んでびっくりした。乗る前に思わず一周回りました。本当に好きじゃなきゃできないこと。鶴見区民として誇らしい」と感心しきり。

 藤岡さんは「自分のデザインが区内を走り、鶴見の盛り上げに役立てるのは嬉しい」と話す。

 鶴見駅西口のタクシープールを拠点とし、区内外を駆け回る“ちむどんらくタクシー”。堀場さんは「鶴見の観光ガイドとして売り出し、情報発信できるタクシーになれれば」と意気込んでいる。

堀場さん(中央)と、デザイナーの藤岡さん(右)、最初の乗客だった舘野さん


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